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凜恋心【最遊記】

第1章 出会い


「悟浄?」
「たばこ、切れたわ。買ってくる」

そう言いながら後ろ手に手を振り部屋から出ていった。その背中を止める事もせず三人は見送った。

「…いいんですか?三蔵」
「なにがだ?」
「悟浄を行かせてしまって。」
「タバコがなくなったならてめぇが買いに行けばいい。ガキじゃねぇんだ。」
「そうかもしれないですが…」
「きっとあの子の事探しに行ったんじゃねぇのかなぁ。」
「…フン」

自分には関係ないと言わんばかりに窓際でたばこをふかし、月を見上げていた。

時ほぼ同じくして…

ポケットから買いに出た筈のタバコを出し、咥えながら膝を抱え突っ伏している雅を見つけた悟浄は、ゆっくり近付いて声をかけた。

「おねーちゃん、こんな夜に一人でいたらアブねぇよ?」
「……ぇ…?」

ゆっくりと顔を上げ振り返る雅の目にはうっすらと涙が溜まっていた。

「あーぁ、こりゃ…たまんねぇな…」

ポツリと呟きながら木に凭れ火をつけるまえのタバコをくしゃりと潰した悟浄。

「あ、……さっきはうるさくしてすみません。お仲間の方にも迷惑かけてしまって…」
「んぁ?…八戒の事か?べっつに?迷惑だなんて思ってねぇよ。」
「私いたら…ゆっくり出来ないですよね…すみません」

立ち上がった雅の手首をきゅっと握り、呼び止めた。

「まぁってって、一人で泣く事なんか許さねぇよ?」
「でも…知らない人に迷惑かけるわけには…」
「あー、そういう…俺は沙悟浄。姉ちゃん、名前は?」
「え…私…?」
「そ、名前。」
「…雅です。花洛雅…」
「雅ちゃんね、これで知らない人じゃなくなった。だろ?」

にっと笑う悟浄の顔につられるように雅も泣きたい気持ちが少しだけ和らいだ。その場に二人がならんで座り、沈黙を破ったのは悟浄だった。

「…で?どうして一人で泣いてんの?あそこに居たってことは、家、なんだろ?」
「………そうです。」
「もしかして、俺らが居る部屋が雅ちゃんの部屋ってオチは…」
「それはそうなんですが、私の部屋だったのはもう十年以上前の事なので…」
「…どう言うこと?」
「あの家にとって私は邪魔な存在でしかないので…」

少し悲しみを帯びた様に笑う雅。視線を向けること無く頭にポンッと大きな手が乗った。
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