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凜恋心【最遊記】

第1章 出会い


どれ程の時が経ったか、日もしっかりとくれた頃。いつものように勝手口から音を立てずに入っていく。しかしこの日は勝手が違っていた。

「…!何で戻ってくるんだ!出ていけ!」
「な…んで……」
「三蔵様が居らしてるのにお前がいたら迷惑だ!ほら、とっとと出てお行き!」
「三蔵…様?」
「翠藍!翠藍!!!」

翠藍を大声で呼びつけながらも、まるで犬や猫を払うかのように雅を追い出そうとする母。そんなところに翠藍はやってきて母を押さえ、雅に申し訳なさそうな顔をして無言で訴えた。

「…あのぅ、……あ」

ひょっこりと顔を覗かせた八戒は母親に罵倒されている雅に気付いた。しかしそれに気付かない母親は尚も雅に罵倒を繰り返す。

「出ていけ?異端児!この役立たずの化け物が!!!」

その言葉を最後に雅は俯いて家を後にした。ハァハァと肩で息をする母親と、押さえる翠藍の背中から八戒は再度声をかけた。

「あのぉ、すみません…忙しいときに…」

その声に振り向いた母親はまるで先程の人とは別人のようににこやかに八戒に笑いかけた。

「お付きの方、いかがなさいましたか?」
「いえ、お節介かと思ったんですけど、大きな声がしたので…」
「ごめんなさいねぇ。騒がしくて」

そういいながら平静を装うかのように俯き加減に答えた母親。すっと目を細めた八戒はその場を離れた。部屋に戻ると大きなため息を吐いていた。

「どうした」
「いえね、今日昼間に出会った女性がここにいましてね…」
「それで?」
「異端児…そう呼ばれていました。」
「異端児…か」
「なぁなぁ、イタンジって…なんで?」
「てめぇも異端児だろうが。」
「そうじゃなくて!何であの子が異端児なの?!ってこと!」
「そんなこと俺らじゃわかんねぇだろ。」
「常識がない、とは思えなかったんですがね。だとしたら悟空と同じように特質的な事なのか…」
「…さっき見かけただけじゃわかんねぇだろうが。」
「それが、化け物、ともいわれていたのが気になりましてね」
「化け物…か……」
「でも俺、あの子が手から出したの、すげぇキレイだと思ったよ?」
「手から…?」
「おぅ!こう、なんていうか、八戒の気功みたいな感じなんだけど、なんかちょっとちがくて…上手く言えねぇんだけどさ!」
「なるほど…」

そう話していると悟浄は何を思ったのか、徐に椅子から立ち上がった。
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