第54章 あなたの愛で繋いで
「え…怜音さん?」
「あ…ごめんなさい…その…驚いちゃって……」
「あ、聞いてました?」
「…明日出発なんですか?」
「そうさせて貰います、長いことお世話になりました」
「そんな……」
そういって立ちすくむ怜音の足元には割れた食器が散らばったままだった。それをみた雅は椅子から立ち上がり、片付けに向かう。
「…雅!?」
「食器、片付けるだけだよ…」
「……嫌…そんな……」
ふらふらと食事の場から出ていく怜音。小さなため息を吐きながらも雅は片付けていく。
「どうなってんだ?」
「さぁ…ってか、雅!俺も手伝う!」
「大丈夫だよ、もうじき集め終わるから!」
にこっと笑い掻けた雅。
「あとは、箒借りてこないと……」
「雅ぃ、そこまですることねえよ!」
「まぁ、悟空の言うことも一理あるけど……」
「ここまでやったんだもん!」
「三蔵?」
「…フン」
そんなこんなをして雅が立ち上がった時だった。キィっと扉が開く。そこには出ていった怜音がたっていた。膝を払い、顔をあげた雅。
「あ、怜音さ……ッッ…」
ドスッ……・・・
「…あなたがいなければ……あなたさえ…!」
怜音の手には厨房から持ってきたものだろう、包丁が握られていた。そのままズッ引き抜くと力に任せて再度打ち付けた。
「……ッックァ…何……」
「雅!」
「おい!何だってんだ!」
「失礼します」
トンっと八戒の手刀がが怜音の後ろ首に入る。フラッと力が抜け、怜音は倒れ込んだ。
「おい!雅!!……八戒!!早くしろ!!」
「おい、落ち着けって三蔵!」
「うるせえ!」
「三蔵、退いてください!傷口塞ぎますから!」
「八戒!」
「三蔵、退いて!」