第54章 あなたの愛で繋いで
そう出きる限りの声を振り絞り雅は怜音に言い放つ。
「…諦めないから…」
そう言い残して怜音は服を拾い上げて部屋を出ていった。幸いにして夜も遅かったため誰にも会わなかったのだろう。騒ぎにはならなかった。しかし部屋に残された三蔵と雅。三蔵に背中を向けたままの雅は動くことが出来なかった。そんな相手にはぁっとため息を吐くと三蔵は立ち上がる。
「…相変わらずタイミング悪い時に戻ってきやがって…」
「……三蔵…それって…」
「言っておくがな。俺はなにもしちゃいねえ。」
「解ってる…」
「…だったら…いい加減こっち向いたらどうだ」
「……できない…」
「何で」
「だって……酷い顔してる…」
「見慣れてる。いいからこっち向け」
そう言いながらもくるりと体を反転させられた雅。その直後には三蔵から唇を重ねていた。
「……ゃ…」
「嫌じゃねえよ。消毒くらいさせやがれ…」
「……三蔵…?」
「やっぱり全然違う…」
「何が…?」
「雅以外じゃ何にも感じねえなってこと」
そう言いながらも三蔵は腰を抱き、何度も離れては重ねていく。
「三蔵…」
「俺は雅以外には興味ねえし、似合うだ似合わねえだなんて関係ないだろうが。それともなんだ。お前は俺が三蔵法師だから傍に居んのか?」
「違う!!」
「だろ?それと一緒だ。それにな、雅以外の女に銃口向けることだってしねえよ」
「それ…どういう意味?」
「…さあな」
そう言いながらも三蔵はくしゃりと前髪を掻き上げた。
「とんだ大晦日になっちまったな」
「三蔵…」
「なんだ」
「……あの…ね?」
「なんだ、さっさと言え…」
「さっきはごめん…」
「何の事だ…」
「本当はすごく嫌だった…三蔵が他の子と話すの…」
「必要最低限しか話してねえよ」
「……それでも…ッ…重たいね…」
「重たかねえよ」
「…三蔵?」
「守る女は雅一人で十分だ。こうして抱き合うのもな…」
そう言いながらも包み込む様にして雅を抱き締めていた。