第54章 あなたの愛で繋いで
そう言いながらも泣き出してしまった雅。八戒しかいないこの空間で雅は我慢していたものが溢れだしていた。
「相手が誰でも…三蔵は渡したくないのに……なんで…あんなこと……エック…言っちゃったんだろ…ヒック…ぉ」
「雅、落ち着いてください?」
「あれじゃ……三蔵に怜音さんのとこに行ってみたいな……」
「雅?」
こぼれ落ちる涙をただひたすらに拭い取る雅。なかなか落ち着けない相手に八戒は優しく聞き返していた。
「何があったんですか…?」
「私…三蔵に…怜音さんと話して…傍にいてあげてって……そんなこと言うつもりなんてなかったのに…」
「ですから、あなたはなんでそんな事…」
「もう嫌だった…こんな誰かに嫉妬して…独り占めしていたくなる自分に…怜音さんは…はっきり自分のが三蔵に似合うって言ってた……でも…理由付けてでも…私は言い返せなかった……」
「雅…」
「似てる…から…私と怜音さん…」
「そんなことはないと思うのですが…」
「三蔵に対して、一生ものの恋だって…そう言いきった…私も同じ…光で…三蔵は私の標で…」
「雅……」
「こんな風にいやな子で居るよりは自分にまっすぐな怜音さんのが『雅…?』……ッッ」
珍しく八戒が言葉を遮って口を開いた。
「あなたと怜音さんの事は解りました。じゃぁ三蔵の意思はどうなるんですか?」
「…え?」
「三蔵は何て言ってるんですか?」
「……それは…」
「聞こうとしなかった。でしょう?」
「……ん」
「それじゃ何も変わらないんじゃないですか?恐らくあなたが何と言っても三蔵のスタンスは変わらないと思いますが、それでもこんな年の瀬に維持の張り合いなんてあなたらしくもない…」
「……でも…」
「まれに見るかわいい子だとしても、表面だけでは人の心を動かせない。ましてやあの三蔵ですよ?」
「……八戒…」
「似合うとか似合わないとか…そんな事、三蔵が気にしてると思いますか?」
「…それは……」
「それは?」
「…ないと思うけど…」
「けど?」
「私が自信ない…」
「もっと自信もって良いと思いますけどね?だってあの三蔵が選んだ唯一の女性ですよ?あなたは」
「……八戒…」
そう話していたものの、少しの間雅は帰りにくそうな顔をしていた。