第53章 純白の花嫁 (後編)
そういって、約束だと言いながらも雅は悟浄に着いていった。
「え、ここって……」
「そっ、ちょっと付き合ってほしくて…さ」
そう言いながらも昨日中に話をしていた衣装部屋に雅を連れていく。
「ほら、入って?」
「ご……じょう…これって」
「いいから、綺麗になってこいよ?」
そういってウインクをすると扉を締めた。
「さぁてと、俺もそろそろ支度しねぇとな」
そう呟きながら…しかし、部屋の中では雅は戸惑っていた。
「あの、私なにも聞いてなくて…」
「存じてます。」
「『存じてます』って……私、このドレス…」
「はい。着てくださいな」
「いえ……これって…ウェディングドレス……?」
「はい。とても可愛らしい方なのでお似合いになると思いますが…」
「そうじゃなくて…」
「着ていただかないと私共も困ります…」
そういわれ、どうしようと迷っている雅。悟浄からはなにも詳しいことは聞いていない。それに連れてこられた場所が教会、初めてこの街に来た時にも結婚式をやっていた。確かに憧れだった…
「だから三蔵…いなかったのかな…」
「なにか仰いましたか?」
「いえ…」
そうしながらも胸元に光るネックレスは変えたくないと懇願し、残してもらうことにした。それから急いで支度をし、髪型も在り合わせの物だが、飾ってもらった。化粧もしてもらい、見るからに華やかに様変わりした。
「こんなにしてもらったのに……」
「可愛い、よくお似合いです」
「……ありがとう」
笑顔を取り繕うにも、雅自身うまく笑えている自信は無かった。上に温かいボレロを着せてもらい、案内される。教会の大きな扉の前では悟浄が淡いラベンダー色のスーツを身に纏い待っていた。長い髪は後ろできゅっと縛っている。
「悟浄……あのね…」
「まぁ、それから先は言わないで?」
「でも…」
「ほら」
そういいながらも右腕をひょいっと差し出し、腕を絡ませるように促した。
「あの…悟浄…」
「もう始まるから。」
「……ッ」
「本当に嫌だったら…神父サマの前で愛は誓えねぇって言ってくれて構わねぇよ?」