第53章 純白の花嫁 (後編)
嬉しそうに八戒は言い残して悟空を連れて別室に向かった。
「聞いていらっしゃらないとは伺ってましたが…」
「全くだ」
「……クスクス…」
「何が可笑しい」
「いえ…失礼しました。何だかんだと言ってらっしゃった割りに、最後は花嫁様の為に、というお姿が何かほほえましくて」
「……」
「では、こちらに置いておきますね?よろしくお願いします。」
そういってカーテンをシャッと締めた。目の前には一面にガラスが嵌め込まれ、真っ白いタキシード一式がハンガーにかけられている。なんだかんだと言いながらもゆっくりと袖を通していく三蔵。着丈、身幅とぴったりなことから、八戒が事前に手を打っていた事は明らかだった。
「それで昨日いなかったのか…」
ポツリと呟いてはゆっくりとした着替えも十分に終えた。カーテンを開けて出てきた三蔵を見て、身支度担当のシスターはほぅ…と息を飲んだ。わいわいと言いながらも八戒と悟空も用意ができたのだろう。三蔵の元に戻ってきた。
「…あ!三蔵!かっけぇ!」
「……悟空、馬子にも衣装」
「三蔵、それを言ったらおしまいですよ?」
「まご???」
「いや、何でもねぇよ」
それでは…とチャペルの方に案内された三人だった。
ちょうどその頃。宿では雅が心配していた。
「みんな、どうしちゃったのかな」
「んー?」
「悟浄、心配じゃない?」
「まぁ、そうは言ってもなぁ」
「その内帰ってくるかな?」
「まぁ、そうだな」
歯切れの悪い悟浄に『ん…』と返事をする雅。時計を見ると十六時を回り、もうじき二十分を指そうとしていた。
「なぁ、雅?」
「なに?」
「少し早ぇんだけど、ちょっと付き合ってくんない?」
「…八戒とか三蔵に連絡できなかったけど…仕方ないよね…」