第6章 芽生え
早いもので、雅が三蔵一行と出逢って一ヶ月が過ぎようとしていた。これまでいくつかの街や村を過ぎ、その合間には妖怪達が襲ってきては雅は何をするでもないままに過ごしてきた。そんなある日の今日はもうじきに街に着くと言うときだった。一行の頭上からバカでかい岩が降って来たのだ。
「きゃっ!」
ドゴン!と言う音と同時に砂ぼこり、砕ける岩が飛び散った。
「げほっ…たく…来やがった…」
「え…来たって…あ、ありがと…悟浄」
「いーえ☆」
砂ぼこりや岩片からは悟浄が咄嗟に抱き寄せて雅は守られた。
「へっへーん!!さーんぞ!」
「…ハァ」
「あーらら、相変わらずハデな登場だねぇ、三蔵サマのカノジョ」
「死にてぇか…」
「だってそう『ガチャリ』…あぁー…なんでもないです」
そうこうしていると岩が2つ、3つと落ちてきた。静かになったと思った途端、上から甲高い声が聞こえてきた。
「さんぞー!!!会いに来たぞ!」
「来なくていい」
「今から降りていくからな!」
「…フン」
ピョンピョンと跳び跳ねるようにその子は降りてきた。
「あ!!」
「どうした雅?」
「あの子……えと…何て言ったっけ」
「関係ないな」
「李厘ちゃんがきったよー!!!」
「そうだ!李厘ちゃん!」
「ん?……あー!!君!前会ったー!」
「…悟空」
「おっけー!!」
そう答えると悟空がヒュッとジープから飛び上がる。李厘と対峙しながら遊んでるかの様に手合わせをしている。しかしながら雅は突然、ふっと心に穴が空いたかの様に感じた。