第52章 純白の花嫁(前編)
そうこうしながら、夕食も終え、宿に戻っていった。個別に部屋がとれたこともあって、のんびりとした時間を過ごしていた。そんな時、悟空の部屋を訪れる八戒。
「悟空?ちょっといいですか?」
「ん?なに?八戒!」
そうして悟空を連れて悟浄の部屋に向かっていく。
「悟浄?いいですか?」
「んぁ?なに?ってか悟空までって…」
「実は…僕今日いいこと思い付いちゃいまして…」
「なになに?!」
そう切り出すと八戒の思い付いたプランを話し出した。
「うわ!めっちゃいいじゃん!」
「でしょう?悟浄は、どうしますか?乗りますか?」
「そりゃもちろん。俺もみたいしな…」
「クス…大人になりましたね、悟浄」
「うっせぇわ」
「でも、三蔵、ちゃんとやってくれるかな」
「さぁ…それが一番の問題なんですけど…」
「雅の手配とかは?」
「てか教会ってそんな簡単に借りれんの?」
「そこなんですよね…坊主が教会って…ってのでも拒否されそうですし…」
「まぁ、なんとかなりそうだけど…」
そう、八戒のプランとはクリスマスに雅の願いを叶えようというものだった。
「でもさ、八戒?」
「はい?」
「一番大事なものが無いんじゃね?」
「…あぁ、それなら心配いりません。」
「…あの、もしかして八戒?」
「クスクス…」
「なぁなぁ、大事なものってなに?」
「指輪だよ、結婚式の指輪」
「え…でもそれないとどうなるの?」
「特にどうこうということはないのですが、やはり女性の夢、でしょうね」
「でもそれじゃ雅の指のサイズわかんねぇよ?八戒知ってるの?」
「僕が知ってたらある意味怖いじゃないですか」
「じゃぁ…!」
「まぁ、悟空?落ち着いてください。実は既にこっそり用意できてるんです。」
「あんの生臭坊主…いつの間に…て、まさかあの時のアレ、まだ渡してねぇの?」
「そうみたいです。」
「それもそうか、渡されてたら着けてるわな…雅も」
「えぇ」
「え…三蔵もってんの?」
「絶対に秘密、内緒ですよ?」
「あぁ」
「言ったらきっと殺されます」
いつも通りのにこやかな表情のまま八戒は答えた。