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凜恋心【最遊記】

第48章 優しいバースディ


「おい、いい加減に出てこい…」
「だって……」
「…買い物に戻った。」
「…三蔵…」
「たく……邪魔しやがって…」
「三蔵…」
「なんだ、さっきから」
「少しだけ……こうしてていい?」

そういうと背中から巻き付いた雅。

「…ハァ…まず服着ろ…」
「……ヤダ…」
「…嫌じゃねえよ…また帰ってくるかも知れねえだろ…」
「…ほんの少しでいいから…」

そういう雅の手をそっと包み込むように手を重ねる三蔵。そのままきゅっと指を絡める

「…全く…」
「三蔵…」
「なんだ」
「……なんでも…ない」
「無い訳ねえだろ」
「三蔵の温度だけでもいい…」
「俺はどうなる…」
「え…?」

ゆっくりと腕を緩めると三蔵は体の向きを変えてゆったりと抱き寄せた。

「俺は抱くことも出来ずに、抱き締めることも出来ねえのか」
「……それは…」
「ゆっくりと誕生日だなんて祝ったこともねえから…どうでもいいと思っては居たが…」
「三蔵?」
「こうして雅と過ごす誕生日なら…悪くないのかも知れん…」
「…ん。」

そうしてゆっくりと体を離す雅。

「ねえ三蔵?」
「なんだ」
「こんなに人って、誰かを好きになれるんだね…」
「…なんだ急に…」
「ううん…ただふと思ったの。あの時三蔵が来てくれなかったら…三蔵が連れ出してくれなかったら…私は今頃どうしてるのかなって…あの生まれた村でまだ生きてるのか…それともとっくに死んでるのか…解らない…でも…」
「……でも?」
「今はね、三蔵とこうして居られて…悟浄や悟空、八戒達と笑い合える日があって…私自身もすごく幸せで…すごく幸せだなって思うの。」
「…そうか」
「ん。ありがとう…」
「…なに言ってやがんだ…」
「だって…」
「礼を言うのは俺の方だ…」
「三蔵?」

そっと頬を包み込むようにしてまっすぐに目を見つめる三蔵。ふっと珍しく口許が緩むと続けて話し出す。

「どうやら俺も大分変わったらしいからな…雅のお陰で…」
「そう…なの?」
「あぁ。それに、守るものが出来た。この俺が、だぜ?」
「…三蔵…」
「もう守られるだけじゃねえだろうが…これから先も一緒に居る間は俺が守ってやるよ…」
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