第5章 災難、そして心
宿に戻ったとたん、八戒は心配そうに雅の前に立った。
「雅…どうしたんですか!」
「あ、心配かけてごめんなさい、でもちょっと短くなっちゃっただけで…」
「どうしてそうなったのか聞いているんです」
「ちょっと…不注意で…」
「…悟空?」
「実は大道芸の人の火吹きで燃えたんだよ」
「…ハァ…話があまりにも見えなさすぎます……」
そうため息を吐くと、八戒は椅子を持ってきて雅を座らせた。
「悟空?ハサミ、借りてきてください。」
「わ…解った!」
急いで部屋を出る悟空と訳が解らない雅。しかしそっと馴れた手付きで髪を鋤き上げると、八戒は雅に問うた。
「燃えたと言う割にはチリチリにもなっていないし、所どころの焦げだけですんでいます。で、バラバラなこの長さは…?」
「服に燃え移らないよぉにって…火が付いた時に切ってくれたの…」
「はっかぁい!借りてきた!」
「どうも、ありがとうございます。さて、すこし整えますから。」
「八戒?」
「大丈夫!悪い様にはしないですから」
「まぁ、安心していいぜ?俺らもたまに切ってもらってる」
「悟浄…」
そう言ってシャキンとハサミを入れた八戒。心地よくも感じる音が続いていた。