第1章 出会い
そんなある日、村の入り口が急に騒がしくなった。
「三蔵法師様がいらっしゃった!」
「三蔵法師様ご一行だ!」
そんな声が雅の耳にも届いてきた。
「三蔵…法師?」
ポツリと呟くもののどこか自分には関係ないと言う気持ちが強い雅は、どさりと草むらに仰向けになった。そのまま時間を過ごしながらも、手のひらを見つめ、ふわりと魔力を具現化させてみる。
「こんな力…要らないのに…そうしたら私も今ごろは…」
『なんだそれ?ねぇねぇ、それすっげぇきれい!』
うしろから突然声をかけられ、びくりと肩を震わせながらゆっくりと振り替える雅。
「えぇ?!なんでやめちゃうの?めちゃくちゃ綺麗だったのにぃ!」
「……えっと…誰?」
「俺?悟空!さっきこの村に着いたんだけどさ!なんか遠くから見えて!!」
「さっきって…じゃぁ三蔵一行の…?」
「三蔵なら向こうにいるけど、それより、さっきの!!もう一回見せてよ!!」
「見ても気持ちのいいものじゃないし……」
「そんなことねぇ!!俺はすげぇ綺麗だと思った!」
目をキラキラさせてみている悟空。その勢いに負けそうになる雅。そんな時だ。遠くから歩いてくる背の高い人がいた。
「あー、居た居た。おい、バカ猿、こんなとこでなぁにやってんだぁ?」
「猿って言うな!エロ河童!」
「んだと?やんのか!?」
「売られた喧嘩なら買ってやるぜぃ!ゴキブリ河童!」
ワチャワチャと始まってしまった喧嘩なのか、じゃれあいなのか…それを見た片眼鏡を着けた温厚な男性が雅に近付いてくる。
「すみません、うちの悟空がご迷惑かけたみたいで。」
「いえ、そんなこと…」
「…?あぁ、あの二人なら気にしないでください、よくあるので。」
「…ッ!?」
その人の肩越しに、少し離れたところで木に凭れたばこを吹かしている金髪の男性がいる。
「…おい、八戒。行くぞ」
「はいはい、ではこの辺りで、ほら悟空、悟浄、行きますよ?」
「八戒ぃぃぃ」
ずるずると半ば引きずられるように去っていく一行。あの双肩にかかったもの、そして少し前に三蔵一行が来たとの声、この村で見たことの無い四人組。
「…間違いない…」
驚きにも似た感覚のまま雅は、とにかく早く日が落ちることだけを待ち続けていた。