第45章 疑惑
「夕飯までには帰れたんですね…」
「あぁ。」
「どこ行ってたんだよ、三蔵」
「誰が言うか」
「…まさか三蔵?浮気か?」
「殺すぞ」
「まぁまぁ、さ、お夕飯にしましょう?」
「やったぁ!」
そうして三蔵がどこで、何をしていたのかは誰も知ること無く、その日は過ぎていく。しかし、夕飯の時に三蔵は思いがけないことを口にした。
「この街にあと三日はいるからな」
「え?三日……ですか?」
「あぁ。それと、俺は日中いねえから。飯食いに行くでも、なんでも好きにしてろ」
「……三蔵は?」
「俺は出掛ける…」
「…そうなんだ…」
きゅっと手を握りしめた雅。もしかしたら悟浄と乗った観覧車も三蔵と乗れるかも知れないと思っていた。少しだけミニ丈のワンピースも、そのためにと言っていいくらいの勢いだったのだ。
「ねえ、三蔵?」
「なんだ」
「…最後の日とか……」
「最終日は十三時には出る。それまで俺は外にいる。」
「……そか、うん。解った。」
そういうと雅はカチャ…と箸を置いた。
「雅?」
「ごめん……部屋…戻る…」
「雅…」
そう言って雅は片付けると洗い物をして部屋に戻っていった。
「三蔵、お前、少し位は雅に付き合ってやってもいいんじゃねえ?」
「うるせえ」
「あ、今日雅服買ったんですよ?」
「そうか、それは良かったな」
「なぁなぁ、なんで三蔵、雅と一緒にいねえの?」
「俺には俺の用事があるんだよ」
「……」
三人は少し不思議に思いもしたものの、これ以上は三蔵からはなにも聞けないと踏んでいた。食事を終えて部屋に戻るとやはり雅の姿はない。
「自分の部屋か…」
ドサッと無造作に置いた紙袋。なかには服が入っている。雅の、というわけではなく三蔵自身の服だった。
「俺だって好き好んで離れてる訳じゃねえよ…」
そう呟くものの、やろうと決めたことを今さら曲げるわけにも行かなかった。しかしその理由は今はまだ誰も知らなかった。