第38章 神と煩悩の狭間
「悪かったな…やっぱりあの時、無理矢理にでも連れていけばよかった。」
「そんな…三蔵のせいじゃないよ…」
「俺のせいだろうが…」
「大丈夫…」
「…たく」
再度ふわりと抱き締める三蔵。
「そんな震えてんのに大丈夫とか言うなよ…」
「……でも…ッッ…三蔵…!?」
ふと腕が緩んだとき、雅は三蔵の足が砂まみれになっていることに気付いた。
「なんだ」
「足……!どうして…」
「は?何言ってんだ」
「だって…!!」
「……あぁ、草履も履くの忘れてたな」
「忘れてたって…こんな砂だらけで…」
「大したことねえよ」
「そんな…お湯とタオル借りて来る!」
「バカ!」
後ろからグッと抱き締めた三蔵。
「さっきの事、もう忘れたのかよ…」
「でも…」
「問題ない」
「そんな……」
「うるせえよ…もう少し自分の事考えやがれ…」
そういいながら腕を緩めることなく三蔵は抱きいれたままだった。
「……三蔵…」
「あんな所だったから声は届いたけど……奥に連れ込まれていたら…聞こえなかったかも知れないと思ったら……俺が正気じゃいられなくなる…」
「三蔵…」
「それに…」
「……それに?」
「いや、何でもない」
ゆっくりと腕を緩めた三蔵はゆっくりと立ち上がった。
「足洗ってくる。先に寝てろ…」
「三蔵…?」
「なんだ」
「すぐ…戻ってくる?」
「あぁ。」
そう返事をして部屋を後にした。残された雅は三蔵の法衣にくるまり、気付けばいつのまにか眠りへと落ちていった。