第37章 予期せぬ治療
ポウっと淡い光が悟浄の体を包み込む。しかしなかなか落ち着かない。
「退け、雅」
「え…三蔵?」
「くっそ重てえな…」
「……ハハ…わり」
そう言いながらも三蔵は悟浄を担いで宿に戻る。手当てを施すものの傷口からの影響だろう、熱が出始めた。
「代わろうか…?雅」
「大丈夫だよ…」
「そっか…またなんかあったら言ってな?」
「おやすみ、悟空」
「おい…」
「あ…三蔵…」
「お前は大丈夫なのか?」
「うん、大分コントロール出来てきたみたい…」
「ならいいが……」
そう言うと三蔵は自室に戻っていった。
しかし、妖怪の爪痕がどれほどのものか解らない。うなされ始める悟浄を前に雅は、意を決して三蔵の部屋に訪ね行った。
コンコン……
『誰だ』
「三蔵…?」
「どうした…」
「三蔵にお願いがあって……」
「なんだ…」
「私、悟浄の治療に回らせて…?」
「さっきまで居たから同じ事だろうが…」
「そうじゃなくて…」
「……どういうことだ…」
「八戒にすごく前に聞いたの、力の使い方教わり始めの頃だったかな…私の力、使い方によっては最大限に引き出せる方法があるって…」
「…それで?」
「でも、それするには三蔵に許可もらわないと…やれない」
「なんだ許可って…」
「肌で…伝えるの…」
「……」
一瞬沈黙が二人を包んだ。それもその筈、肌で伝えるという事がどういう状況かは三蔵も容易に想像できたのだ。
「お願い…このままじゃ…薬も切れてる中で悟浄悪化するばっかになっちゃう…それに八戒もあの状態じゃ力使わせるわけにも行かないし…」
「…今回ばかりは俺が止めてもやるんだろうが」
「…三蔵…」
「それに、雅なら言い出すとは思ってた」
「え……」
「目の前で刺されたんじゃな…ただし、間違うなよ、治療だからな…」
「ありがとう…」
ペコリと頭を下げて、雅は部屋を出ていく。その背中を見送って三蔵はポツリと呟いた。
「なんで雅あいつの力が治癒なのか…こういう時は本当に役立つと言うか、役に立ってほしくねえって言うか…」
そんな呟きが雅に聞こえている訳もなかった。雅は悟浄の部屋に入ると悟浄の服を脱がし出す。
「ごめんね…痛いよね…」
「クッ…ンアァ!!ハァハァ…」
「この位でいいかな…」