第37章 予期せぬ治療
パンツはそのままに、ジャケットだけ脱がせ、インナーは切り開いた。そのまま取り去ると自身も下着のみになる。ごそりと悟浄の居るベッドに入ると、そっと傷口に手を当て、力をこめる。しかし限界もあった。そっと頬を包み込むと悟浄の唇に自身のそれを重ね、ふぅっと息を吐き入れる。ゆっくりと離れると雅は悟浄の胸に顔を埋め寄り添いながら願い続けた。
ただ、悟浄の傷が癒えるように…
悟浄の悪夢が消え去るように…
それだけを願い、めまいが軽くなれば何度も唇を重ね吹き込んでいく。抱いて、温もりと同時に体全身で気を送っていく。気付けば、悟浄の寝息も心地よく、規則正しくなっていた。安心したのだろうか、雅もそのまま寄り添い夜を明かしたのだった。
翌朝、誰よりも一番驚いたのは当然の事ながら悟浄だった。
「……やっべ…俺…記憶ねえんだけど……」
「…ン…」
「おい、雅…?」
「あ…ごめん…寝ちゃってた……?」
「それより…これ…」
「治療…大丈夫、三蔵にも話してやってることだから…」
「治療って……」
「それより傷、どう?」
「……あ、そっか…俺…」
「その様子なら大丈夫そうだね…」
「まさかとは思うが…この状態で一晩?」
「ん。これしか思い付かなかった…八戒は風邪だし、昨日のあの状態で薬も切れてきてる。ある意味よそ者の私達に回す分なんてないでしょ?」
そう言いながらも服を着ていく雅。
「先に小さい子助けるのに力出しちゃったし……私に出来る最終手段…」
「……雅…」
しっかりと着込み終わるとくるりと向きを変えて雅は悟浄の首に巻き付いた。
「でも、ちゃんと出来て良かった。」
「雅…?」
「ご飯、食べれそうならまた後でね?」
「……あぁ」
ゆっくりと離れる雅。『あっ…』と思い出したかの様に振り替えると申し訳なさそうに悟浄に伝え始めた。
「あの…悟浄?」
「何?」
「ごめんね…?」
「…?何が?」
「その…気、送るためとは言え…何回かキスして…意識ないのいいことに……ほんとごめん!!」
言うだけ意って悟浄の返事を聞くこともない内に雅は部屋から出ていった。残された悟浄は、呆気にとられながらも、みるみる内に顔は赤面していく。
「キスって……何回も…?俺…覚えてねえんですけど……くっそ、勿体ねえ……」
そう呟きながらゆっくりと唇をなぞっていた。
