第35章 初めての喧嘩
「来い」
そういうだけ言って先に席を立ってしまった。
「ちょ…!と……三蔵?」
「雅?どうかしましたか?」
「私が聞きたい…」
そう言い残して雅は三蔵の後を追った。部屋に戻る三蔵の後を追いかけて雅も部屋に入って行く。
「ちょっと、三蔵?なに?」
「『何』はこっちの台詞だ」
「どう言うこと?」
「確認したいことがある」
「…何?」
「昨日悟浄と何もなかったって言ったよな」
「うん、無かったよ?」
「あの春叡とか言う男、昨日の夜にお前とあのバカが抱き合ってるところをみたって言っていた。どっちなんだ」
「え?」
「はっきり言え、」
「抱き合ったって言うか……廊下で話してるときに他のお客さんが通った時に避けるのに引き寄せられたってのはあるけど…」
「…本当にそれだけか?」
「うん」
「あの男は廊下でじゃない。食堂でって言ってたが?」
一生懸命に雅は取り繕った。春叡がどこの様子をみたのかは解らない…それでもなぜか抱き合ったことをしっかりと話せないでいた。
「…嘘じゃねえだろうな」
「無いよ」
「…じゃぁ言ってやろうか」
「…ッッ」
「お前が嘘吐くときは決まって両手を握りしめる。今もそうだろうが、気付いてないとでも思ったか?」
「…三蔵…」
「何を隠してやがる…」
「そんなこと…」
「そうまでしてあのバカの事守りたいのか?」
「そうじゃ…」
「だから嘘吐いても許して貰おうとかで昨日のアレか?」
「違う…!!」
「吐くならもっとましな嘘吐けよ!」
「もういい!三蔵のバカ!!」
「あぁ結構だ!出ていけ!」
「言われなくても出てく!!わからず屋!!!」
そういって三蔵の部屋をバタンと飛び出していった雅。目からは大量の涙が溢れていた。どこに行くことも出来ない…どうしてこうなったのか…そんなことは自問自答するまでも無かった。