第35章 初めての喧嘩
その頃の三人は、買い物途中だった。
「…・・じゃぁ、僕これお会計してくるので、買ったもの袋にいれといてくださいね?」
「はぁい!!」
そう返事をしながら雅と悟浄は袋にいれていく。
「そういや雅?」
「ん?」
「昨日、あれからどうした?」
「……それ……恥ずかしい」
「…シたのか…」
「……ん」
「はぁぁ、それでか」
「え?」
「今朝三蔵荷さ?『てめえは何言ってやがる』何て言われたから」
「…あ、そっか…」
「でも、良かった」
「ん……」
言葉少にしても悟浄にはそれだけでうまく行ったのだと解っていた。嬉しそうにはにかむ雅の顔と、今朝の三蔵の言葉と裏腹に柔らかな空気、それが全てを物語っていたのだ。
「悟浄は…?昨日大丈夫だった?」
「あぁ、俺の事は気にしなくて良い」
「でも」
「昨日、何かあったんですか?」
「八戒…!!」
「ん?」
「何も……!」
「悟浄、あなたまた何かしたんですか?」
「してねえよ。人聞き悪いこというな」
「……そうですか」
「ん!」
そうして何事もなかったかの様に買い物を続けていき、宿に戻っていくのだった。
「たっだいまぁ!」
「おかえりなさい」
「あれ、三蔵ずっと春叡さんと話してたの?」
「ほぇえ、珍しいこともあるもんだな」
「いえ、僕がほぼ一方的に話してたんですよ」
「…でしょうね、うちの三蔵あまり話しませんし」
「でも良いんです。少しでも話が出来たので」
「なんか、三蔵のファンの人みたい…」
「気持ちわりぃ事いうな、雅」
「ごめん…」
「まぁまぁ、そんなこといわないで、でも、三蔵さんも大変だね…」
「三蔵が大変って?」
「いや、こっちの話です」
そう笑いながらも春叡は少し出てきますと言い残して部屋を後にした。扉もしまり、少し間をおいてから八戒は話し出す。