第35章 初めての喧嘩
ため息を吐きながらも三人で出掛けていった。宿に残ったのは三蔵と春叡。なぜか二人揃って同じ部屋にいた。
「そういえば…三蔵さん、とお呼びして良いですか?」
「…フン、勝手にしろ」
「良かったー!三蔵さんは何しに西へ?」
「……西に行くと行った覚えは無いが?」
「一緒にならなかったからてっきり西に行くのかと…僕ら西側から来たので」
「…そうか」
「それで?答え聞いてないですが…」
「ちょっとした野暮用だ」
「そうでしたか…僕らは東の方に少し用事があって…行ってしまえば僕らも野暮用、ってとこですか」
「……」
「あ、もしかして興味ないですか?」
「あぁ、これっぽっちもな」
「ひど!」
「…おしゃべりな男は気が許せないだけだ。気にするな」
「…僕、そんなにおしゃべりですかね」
「あぁ。うちのバカどもに比べたらまだ良い方だがな」
「そっかぁ。でも、あの一緒にいる女の子、かわいいですね…」
「…くれてはやらんぞ」
「そんなこと言ってないじゃないですか、ただ、あれだけかわいい子だとあの赤髪のお兄さんも大変だろうなって」
「……何の事だ」
「昨日の夜に、みちゃったんですよ…食堂で二人が抱き合ってるの。にもかかわらず今朝みたら五人じゃないですか。仲間の中での恋は大変だろうなぁって思っただけです」
そういう春叡の目はなにかを企んでいる、と言うよりも、単なる話好きと言った様子だった。
「フン…言っておくがあの女はあいつのじゃねえよ」
「え、そうなんですか?」
「あぁ」
「……そっか…いや、すごい勘違いしてたかも知れないです、すみません」
「…いや」
そう答えるだけの三蔵。しかし、昨日の雅から聞いた相談内容も踏まえたとしてもなきにしもあらず、と言ったところだった。しかしなにも無かったと言う雅。
「どっちにしても関係ねえな」
「え、何か言いましたか?」
「いや、何でもねえ」
そう答えるのみだった。