第35章 初めての喧嘩

「嫌ですね、そんなおっかない目で見ないでくださいよ。そちらの方の肩にかかってるの、経文でしょう？」
「……何者ですか？あなた方」
「あぁ、すみません、僕は李春叡(ﾘ ｼｭﾝｴｲ)。こっちは連れの水鐸(ﾐﾀｸ)。僕らも旅してるんですよ。」
「…なるほど、それで三蔵の事も知ってるって訳ですか…」
「そうなんです。有名ですから…」

そういうとフッと口許を緩めて笑う春叡。

「…なぁな、水鐸って…何したらそんなでっかくなれんの？」
「悟空、突然すぎますよ？」
「わり、でも…」

そういうと席を立ち水鐸の前に立つと悟空はペタペタと体を触る。

「ムッキムキ！！！！かっけぇぇぇ！！」
「…すみません」
「いや、構わないが……」
「ところで、皆さんいつまでいられるんですか？」
「今日明日には、ね、三蔵」
「あぁ…」
「そうでしたか、少しゆっくりと話せたらと思ったんですけど…」
「…と言いますと？」
「ほら、あんまり旅の一行って言っても三蔵法師さんに会う事って無いですからね。色々話聞けたらって」
「ﾌﾝ…興味ないな」
「なぁ！三蔵！！俺水鐸と手合わせしてみたい！！」
「何言ってやがる」
「良いじゃないですか！出発、明日でも良いんでしょう？」
「……ﾊｧ…」
「どうします？三蔵」
「……解った」

そう言い、珍しく三蔵が折れる形になって滞在が一泊延びた。

「じゃぁさ！水鐸！！飯食ったらどっか広いとこ行こうぜ！！」
「そうだな」

そう話している悟空。朝食を済ませると予告通りに悟空と水鐸は宿を後にする。

「では僕達、買い出しに行ってきますから三蔵。」
「あぁ。」
「行きましょう？雅、悟浄も！！」
「たく、なんで俺まで…」
「良いじゃん、行こ？悟浄」
「はぁぁ」