第31章 泣けない理由
その一言で雅は言葉をつぐんでしまった。ポンッと頭に大きな手のひらが乗ると、三蔵はゆっくりと話し出す。
「俺は帰ってきた。簡単には死なねえよ。」
「…そんなの……当たり前でしょ…天下の三蔵法師様なんでしょ…!!」
「解ってるじゃねえか」
「それに……!そのネックレスだって…!返してもらわないといけないし!それに…まだやり残したことある中で死んだりしたら承知しないし…!それから…」
「解ったよ…もういい……」
「お帰りって……いえないのは嫌だし…ッッ…」
そこまで言うと雅の目からは止めることが出来なくなるほど大粒の涙が溢れていた。
「さん…ック…ぞ……エック…か…ヒック……ッッ…」
「泣くか喋るかどっちかにしろ」
「……お帰り……ぃぃ」
「…あぁ、ただいま」
そう言いながら雅は両手で涙をぬぐっていた。
「…フッ…汚ねぇ顔」
「うるさい…!バカ三蔵!」
「…言ってくれるじゃねぇか…」
「三蔵なんて…ッ…三蔵なんか!!」
「俺がなんだって?ん?」
「バカだし…それに…人の事バカって言うし…無茶ばっかするし……それから…まだたくさんあるんだから…」
「…解ったから、でも、まぁ総括すりゃ、こう言う事だろ」
そう言い終わるが早いか、三蔵はゆっくりと雅に重なるように唇を軽く合わせた。
「……フェェ…ヒックッッ」
「…チッ、泣くなって」
そんな事を話していた。
廊下では少し開いた扉から中に入るに入れずにいる三人がいた。
「三蔵…目覚めたからって言ったから来たのに…何か入れねぇや」
「だな。」
「…だから言ったじゃないですか。」
「にしても、泣けたな、雅」
「そうですね」
「あ、三蔵、キスしてる」
「マジ?」
「これじゃぁ悟浄の事言えないですね」
「病み上がりでなぁにやってんだか…」
「まぁまぁ、少しでも三蔵の体力が早く戻るなら良いとしませんか?」
「だな!」
「お、猿が物分かり良いな。」
「へへ」
「さて。バレる前に部屋に一旦戻りましょうか?」
そうして三人はひと安心して部屋に戻っていった。