第31章 泣けない理由
「三蔵、気付いたんですね?」
「八戒、悪いな、こいつと話がしたい」
「解りました」
そういって八戒は席を外した。顔をクッと一瞬しかめながらも、上半身を起こした三蔵。
「…おい」
「……ごめんなさい…」
「何謝ってんだ…」
「だって……私…口だけで…三蔵の事…助けたかったのに…傷口塞ぐしか出来なくて……大きな所は八戒の力借りるしかなかったし…三蔵戻ってきた時、血だらけの三蔵見て怖くなって…足だって動かなくなるし……それに『うるせえよ』……三蔵」
雅の止まらない言葉を遮り止めた三蔵。
「目が覚めた途端にそんなに矢継ぎ早に色々言うな。」
「……」
「それに言っただろうが、雅に力は求めてねえって……」
「…三蔵…」
「でも、助けてくれたんだろう?ありがとう」
「…でも…ッ」
「それと…何も出来なかった訳じゃねえよ」
そういうとそっと桜のネックレスに触れた三蔵。
「これが俺を助けてくれたからな」
「え…?」
「俺の意思が弱かった訳じゃないと思うが…これがあって…自分を取り戻すことが出来た。」
「…三蔵…?」
「それでここに居る。」
そう俯いている雅にまっすぐに伝える三蔵。
「血だらけになってる三蔵……支えられなかった…」
「男の俺が女に支えられる訳ねえだろうが」
「それに……それに……」
「あぁもう…うるせえよ」