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凜恋心【最遊記】

第31章 泣けない理由


八戒と雅が一緒に宿を取りに行く。出てきたばかりの宿とは、まるで様子が違う。宿だけではない、村全体で優しさが温かかった。

「小部屋と四人部屋でいいのかい?」
「えぇ、ありますでしょうか?」
「四人部屋と二人部屋なら空いてるが…それでもいいかい?」
「構いません、お願いします」

そういって八戒がほとんど決めた宿。

「……び…雅?」
「……」
「雅?!」
「え……あ、ごめん!」
「大丈夫ですか?」
「ん!大丈夫!」
「悟浄にも聞かれていましたけど…本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ!宿取れたこと言ってくるね!」

作り出す笑顔がなにかを隠していることは八戒でも容易く手に取るように解った。ため息を吐くと同時に三ぞを抱えた悟浄と心配そうに付き添う悟空。最後に雅が入ってくる。

「二人部屋に三蔵いれましょう」
「おいおい!大丈夫かい?」
「えぇ、少し長期的にお世話になってしまいますが…」
「薬とか…必要なら……」
「あ、ありがとうございます」

八戒もお礼を言って運び込む。ベッドにどさりと下ろすとため息を吐きながらも三蔵の法衣を脱がせていく悟浄。

「あぁあ、ヤローの服脱がせるのはこれっきりにして欲しいわ…」

そう呟きながらも手早く脱がせていく。バサリと椅子にかけると立ち尽くしている雅に声をかけた。

「雅?」
「…悟浄……」
「どうしたよ」
「…ううん、ありがと」
「…ハァア…気が向いたらいつでも話は聞くからよ」

ポンッと頭を撫でて三蔵と雅を残して悟浄は部屋を後にした。そのまま八戒達の居る四人部屋に向かっていく。

「どうでしたか?」
「とりあえず三蔵の服だけは脱がしてきた。」
「…雅は?」
「んーー……イテェな…」
「どうかしたの?雅!」
「…いや…怪我とかじゃないんだけど…」
「……やはり…ですか…」
「やはりって?」
「ずっと…何かを考えてるんですよ…」
「大分力使っちゃってたから…疲れてんのかな…」
「ただの疲労って訳でも無さそうだしな…」
「……三蔵が…血だらけだったからだよな…」
「泣かねぇのが心配なんだよ…」

そう悟浄が言うと、八戒も小さく頷いた。
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