第30章 傷だらけの導
「よかった…逢えた……ハァハァ…三蔵……は?」
「一緒じゃねえのか?」
「キュキュ!」
「白竜も…」
「三蔵は?!」
しかしその問いに誰も答える間もなく、街の人が囲んでくる。雅は力が抜け、倒れそうになる寸でで悟浄に抱き止められた。
「お前達に罪はないけど……」
「そうだ…妖怪に襲われない…安心して生きていくには街の人間以外に犠牲になってもらわないと…」
「あんた達……それ本気で言ってるのかよ!!」
「もちろんだ!それでこの街が平和なら……見知らぬ旅人さんに犠牲になってもらわなきゃ…」
「おかしいよ……そんなの…」
「雅……」
「おかしかろうと、それが俺たちの選んだ道だ!」
「…あなた方の言い分は解ります。守りたい気持ちも…でも、僕らにもあるんですよ。守りたいものがあるのはあなた達だけじゃあない…」
「かかれー!!!」
そういって街人がほぼ総出だろうか、近付いてくるときだ。
パァァァン……
ひとつの聞きなれた銃声が空に響いた。
「……退け」
「まさか……生きてるはずなど……」
しかし、血だらけで、傷を深傷に負っている三蔵を見て街人はその場を動けなくなっていた。三蔵の『退け』に街人は左右に割れ、一行までの道が出来る。
「何をしている!捕まえろ!」
そういう宿主や町長の言葉も街人には届いていないのか、未だ誰も動けなかった。しかしそれは街人だけでなく雅も同様だったのだ。
「さんぞ…ぉ?」
「…おいおい」
「おぃ…さ…三蔵!?」
悟空が歩みよりその腕の中に三蔵は倒れ込んだ。シャラっとまたも雅のネックレスが零れ出るも、今の三蔵にはもう服の中に戻す気力もなかった。
「…やっぱり……あの頃とは違うな……」
「え?」
そう呟いた三蔵は朦朧とした意識の中でも町長との会話が出来ていた。
「あの妖怪共がいて……人間などそんなに強くなどあるはず無い…!生き延びるなど…!」
「……生き延びてやるさ…胸はって死ぬためにな…それに…これが俺達の選んだ道だ…」
そう言い残して悟空に担がれながら三蔵は歩いていく。その後ろを八戒や悟浄、雅も着いていく。