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凜恋心【最遊記】

第30章 傷だらけの導


「…悟空?ちょっと退いてください?」
「え……?」

そう言うとどこからともなくスッと針金を取り出した八戒。鼻唄を歌いながらもカチャカチャとやっている内にカチャっと音がして、重たい鍵はガチャっと落ちていった。

「八戒……すげぇ…」
「こいつ…マジですげえな…」

そう言われながらも八戒はにこやかに笑うと外に出ていき表に出ようとしていた。

その頃の雅はどうしても眠りに付くことが出来ずに待っていた。しかしなにか胸騒ぎがする。

「なんだろう…この感じ……」

胸騒ぎと言うにも少し違う……怖い様な…なにか嫌なことが起こっているような……そんな気持ちに刈られていた。ベッドを抜け出し、白竜を連れて部屋を出ようとした。

「おや?こんな夜更けにどちらへ?」

扉を開けた瞬間に、見張りと言わんばかりに街の人がいた。

「え…っと、ちょっと……」
「困りますねぇ…しっかりとお休みになってください?」

そう言われ部屋に押し込まれる雅。何かがおかしい。街の入り口を入った瞬間に感じた違和感と何か似ている。窓を開け、下を見る。

「白竜……行けるかな……」
「キュキュ!」
「そうだね…やってみなきゃ解んない……」

そう呟くとシーツを裂き、結ぶと、ゆっくりと降り出した。恐怖心よりも『何か』解らないけど呼ばれている様な気がしてならない雅は、やっとの思いで降りきった。

「どっちだろ…」
「キュキュー!」
「…こっち?」

白竜が教える方を向いて走り出した。バレない内に、誰よりも早く……行かなくては行けない…そんなことを考えていた。一際明るく、大きい建物が見えてきた。白竜も声をあげる。

「あそこ?なんだろ…あの場所……」

しかし、少し離れた場所から明かりを灯した人、桑や木の棒を持った人、色々な人が追いかけてきているのを気付いた雅は、跳ねる鼓動を押さえながらも、遠いまま、なかなか近付いてこない建物を目指していた。

「お願い……ハァハァハァ……頑張って……ッッ…私の…ハァ…足……お願い……」

そう言いながらももつれる足をなんとか前にと踏み出す。大きな門が開いた時だ。

「雅!!」

その声を聞いた雅は目の前の三人の元に近付いてくる。
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