第30章 傷だらけの導
一方の三蔵は、宿主に連れられて一件の大屋敷にやってきた。
「…おい、どこまで行く気だ」
「こちらです。他の街人が簡単に入れない様に奥まっているので……」
「…フン、それで?あのバカ共は何をしたんだ…」
「……それは私には解りかねます。」
そう答えを聞いた三蔵は少し不思議に思いながらも着いていくしかなかった。なんの音沙汰も無く、真夜中になっても誰も帰ってこない…それにはなにかの理由があるのだろうと考えていたものの、八戒まで一緒に捕まるとは、考えてもいなかった。
「……こちらです。どうぞ」
そう促された先にいたのはこの街の町長とされている男の元だった。
「これはこれは、三蔵法師様。よくいらしてくださいました。」
「来たくて来た訳じゃない。」
「私は一度あなたと話がしてみたくて」
「俺はお前に用はない。うちのバカ共を引き取ったら戻らせてもらう。」
「……それは出来るでしょうか…」
「なんだ……ッッ」
いきなり三蔵の足元ががぱっと開き、三蔵はまっ逆さまに落ちていく。
「チッ……」
「私との話を拒むからですよ…」
そう頭上で声がした。しかし次の瞬間に三蔵の目の前には何人とも言えぬほどの妖怪がいたのだ。
「ぐえへへへへ」
「タク…鬱陶しい…」
「お尋ね者の玄奘三蔵!!その命と経文!!俺たちが頂いた!!!!」
「……うるせえんだよ!」
ジャカっと銃を構える三蔵。
「こんな場所で無駄に撃ったらお前も道連れになるぞぉぉぉぉ!!!」
しかしそんな妖怪の言葉に耳を貸すわけも無く、三蔵は天井に付いているランプをめがけて撃っていく。五発撃ち、全て命中させると回りは暗闇になる。その間を縫って三蔵は走り出した。途中、弾を入れ直しながらも走り抜けていく。それでも後ろからやって来る妖怪、前を塞ぐ妖怪……様々居るが、撃ち殺していくものの、三蔵一人に対して相手にする妖怪の数は多すぎた。
ようやく外の光が見えたと思えば、そこには今までの数以上の妖怪が回りを固めている。
「……あぁ…・・・あの時と同じだな…」