第29章 夜空に咲く、花
「あんたは、幸せ者だね」
「え?」
「私にもね、娘がいたんだよ。でももう三年前に嫁に行っちまってね。」
「そうなんですね、でも娘さんも幸せだと思いますよ?好きな相手と結婚して行かれたなら…」
「……」
「あの…」
「もうずっと遠くの街の……二度と会えないところにね…たまたま立ちよった旅の人に一目惚れしちまってね…」
「そうだったんですね…」
「でもまぁ、便りも無いが…たぶん元気にやってるはずさ。よし!できた。慣れるまでは多少歩きにくいだろうが、ゆっくり歩いて貰う事だね」
そういって背中をぽんと押され、雅はゆっくりと歩きだした。
コンコン…
「……あ、」
「ごめんなさい、お待たせ……」
「タク…おせぇ…よ……」
「似合うかな…」
「…ほら、三蔵」
「……まぁ、それなりにな」
「ありが……さ…んぞ…」
「何だ」
「……ッッ」
「何だ、言いたいことがあるなら言え」
「…かっこいい……」
「…チッ、何だそれ…」
「作戦成功だな!八戒!」
「そうですね。三蔵細いですからサイズも心配でしたが…」
「…フン」
「さて、それじゃぁみんな揃ったのでいきましょうか、ほら、雅?見惚れてますけど、あなたも相当かわいいですからね?」
そう八戒は促してみんなで向かうことにした四人。
「なぁ!あっちいってみようよ!」
「悟空?あんまりはしゃぐとはぐれちゃいますよ?」
「こっちこっち!!」
「全く…」
少し離れたところで三人が追い付くのを待っている悟空。しかし一生懸命歩くものの雅の歩調がいつもとやはり違っていた。