第26章 眠れぬ夜
「そっか…」
その内容は、悟空がつい先ほど話してくれた内容と全く同じものだった。
「それで、いきなり次の指令が来たと思えば、桃源郷の異変を止めろって言って西に向かっている。その途中でお前と出会った。以上だ」
「…三蔵…」
気付けば雅の目からは涙が溢れていた。
「なんで泣いてやがる。」
「……解んない…」
「意味も無く泣くわけねえだろう」
「だって……知らない事もあったけど……それでも…なんか解んないんだけど…」
「バカが…俺の話だろうが、泣くんじゃねぇよ」
「……ヒック……エック…」
「何で泣いてるかは知らねぇが…泣かせるつもりはなかった。」
「……フルル…」
首を左右に振る雅。はぁっとため息を吐く三蔵の手をそっと包み込むように握りしめた雅。
「心配するな。確かに悟空の事は目が離せねぇけど…俺がどうこうって事無くても不自由はない。嫌いかどうかなんて聞かれたらそんなことはねぇんだろうけど。」
「三蔵…」
「あぁ、クソ…解らねぇな。」
慣れないことをしたと言わんばかりに月を見上げた三蔵。しかしその夜空は時期に首に巻き付いた雅で消された。
「おい…」
「ごめんね……」
「何謝ってんだ。」
「だって…慣れない事だろうし…それに、お師匠様…光明さんの事も……話したくなかったかも知れないのに…」
「いつだったか言ったろうが…そのうち話すと」
「……ッ、この事だったんだ…」
「他に何がある…」
「だって…解らなかったから…」
「あの時には話してなかったから当然だろうが」
「三蔵……」
「なんだ」
「ありがとう…」
「俺が話したかったから話しただけだ。」
そう言うと、そっと肩を押し戻す三蔵。
「泣くんじゃねぇよ」
「だって……」
「そんなお涙頂戴的な話じゃねぇだろうが。」
「そんなこと無い…!!」
思っていたよりも大きな声が出てしまった雅。