第24章 戻りくる日常
「帰りたくない、は少し傷付きました。」
「…ごめんなさい…」
「あなたの居場所がここから無くなった訳じゃないんです。」
「と言うか、ここにはいくらでもあるってな!」
「…三蔵だけじゃない。僕も悟空も悟浄も…皆あなたの事を心配して、あなたの帰る場所でありたいと思っているんです。」
「……」
「なぁ雅?」
「…はい…」
「俺さ、なんで紅孩児の所に一時的にでも行ったのかはわかんねぇけどさ、雅がいなくなってすっげぇ嫌だった。腹も減らねぇし、なんかすっげぇジープも狭くて…息苦しくなった。」
「…悟空」
「三蔵と違って、我慢したくないから…俺は俺の意思で雅を、雅と一緒にいたい。この五人の中で誰も欠けちゃ行けないんだよ…本当にそう思った」
「……ま、今回は猿の言うこと正論ばっかだけど…」
「悟浄…」
「雅?俺、マジでぶん殴りたいんだよね、今。」
「悟浄?」
そう言うと悟浄は真面目な顔をして雅に近付いてくる。誰もそれを止めようとはしなかった。
「雅、覚悟は良いか?」
「……ッッ」
グッと歯を食い縛るとパンッと両頬を、悟浄の手で一気に包み込まれた。
「ご…浄?」
「痛てぇだろ…」
「……ッ」
「言っておくけどな…こんなもんじゃねぇんだからな」
「…悟浄……ぉ…ヒック…」
「俺らはさ、守るもんなんて自分自身の事一つで良いと思ってんだよ。でも、いつからかそれが変わって。雅も守んなきゃって思ってるわけ。」
「ヒック……エック……」
「だからさ…勝手にもうどこかに行ったりとか、勘弁してな。三蔵もめちゃくちゃ荒れるし」
クスクスと笑う悟浄の首に背伸びして巻き付く雅。耳元で「ごめん…」と連呼していた。
「あ!悟浄だけずりぃ!!」
そう言うと雅の背中から悟空は巻き付く。その姿をみて八戒は苦笑いをしていた。
「あーらら、雅モテモテですね、三蔵?」
「…フン」
「あれ?怒らないんですか?」
「……たまには良いだろう」
そう呟きながらも口許は緩んでいる。そんな三蔵をみて八戒は嬉しそうに笑っていた。
「僕がやらなくても、やっぱり雅が治しましたね」
「…何の事だ」
「素直じゃないんですから」
そうぶっきらぼうに答える三蔵相手でも、八戒は笑ってみている。
「さぁさ、奇襲が来る前に皆で朝御飯、食べちゃいましょう?」
「賛成!!!!」
そうして賑やかな朝食が一行に戻ってきた。
