第23章 揺れる心
その声と同時にぶわっと風は巻き起こる。しかしその風は所々に刃のようなものが混じっていた。ピッと三蔵の頬に傷が付く。
「あれは…」
「マジか…」
キラリと光るような何かが飛んでくるのをみて八戒と悟浄は目を疑った。
「雅の力が暴走しかけてるのかもしれないですね」
「暴走って…」
「言ったじゃないですか…使い方、扱い方によっては彼女の力は正にも悪にもなる…」
そう八戒は付け加えた。
「待てよ…だとしたら、ちょっとブレただけでアレかよ…」
三蔵に頬に傷を付けた雅の風の刃。こちらに不意に飛んできてもおかしくない物だった。
「ほぅ、少しはまともになったか?」
「…三蔵が要らないって…私…」
「いい加減にしろ」
ジリッと近付く三蔵。目の前まで来ると上から見下ろす形で雅を見つめた。
「俺をみろ」
「……いや…」
「うるせぇよ。顔あげやがれ」
そう言うとしゃがみこみぐいっと顎を持ち上げる三蔵。
「いい加減に自分の心と向き合え」
「…だって…」
「うるせえよ。俺は言っちゃいねえが、お前が聞いたって言うならそうかも知れない。」
「……三蔵…」
「だけどな、それを信じるも信じねえもお前が決めることだろうが。それでも、お前はその伝言を信じたんだろう?」
「……ッッ」
「だったらそれはお前が決めたことになるだろうが」
「……そうじゃないッ!!!」
パンッ!!
思いっきり雅の右手は三蔵の頬を捉えた。その度にキンッと耳の奥で何か解らない、得体の知れない不安感が音となって聞こえてくる。耳を押さえ、なにも聞きたくない、と言わんばかりに俯く雅。
「てめ…ッッ」
「…もう嫌だ…一人にしないで…」
そう言う雅。声が届かない、いや、このままでは聞こうとしない…声が、届かない…そう感じた三蔵は懐から昇霊銃を取り出して空に向かって一発打ち放つ。