第23章 揺れる心
そう紅孩児に一喝する三蔵。ため息を吐きながらもどうこうしようと言うわけではなさそうな紅孩児の様子を見て悟空も悟浄もそれぞれ手にしていた武器をしまいこんだ。
「…いつまで後ろに隠れているつもりだ」
「……」
「ハァァ…だんまりか。それでいいならそうしていろ。俺は行くからな」
そう言って三蔵はくるりと背中を向けた。すたすたと歩き出す三蔵に向かって雅は俯きながらも声を出す。
「……だって…だって三蔵が言ったんじゃない!」
「……」
その言葉で三蔵の歩みはピタリと止まる。雅の方に体を向け直すと『話を聞こうか』と言わんばかりにじっと見つめていた。
「三蔵が……もう顔みたくないって……話があるって呼び出して……その結果……」
「いつ俺が言った、そんなこと」
「言いたくないなら言わなくてもいい!!でも…だったら私……あんなこと言わなくても良かったじゃない…」
「何を勘違いしてるか解らねえが。俺が、いつ、お前を要らないと言った。」
「だって…伝言『そんなことは聞いてねえよ!』…ッッ」
「もう一度聞く。俺がいつ言った」
三蔵の問いかけに雅は言葉を失った。その時、キンッ…と雅の耳の奥が異常を知らせるかのようにグラリと意識が歪む。
「…雅!」
「手え出すな」
「しかし…!」
「紅…」
独角兕は手を出そうとする紅孩児を止めた。そのまま、視線を三蔵に向ける。
「表に出てこい、雅」
「……」
「立てよ。」
そう言われるも手をきつく握りしめたまま、雅はパタパタと落ちる涙を止めることもなく、立ち上がることも出来なかった。
「三蔵…雅!」
「ダメです、悟空。」
「でも…」
「やめとけ、猿」
「……そんな…」
ただただ見ているしか出来ないもどかしさを抱えながらも悟空始め三蔵と雅以外の五人は二人を見ていた。
「一人になんて…戻りたくなかった…あんな怖い思い…」
「……」
「三蔵の……ばか…」
「なんと言ってくれても構わねえがな、そっちに着くも、俺達と来るのも、お前が決めたんだろうが」
「違う!!」