第22章 過去と、価値
「人間が妖怪を千匹殺して、その血を浴びると、妖怪になるって言う謂れがありましてね。僕は憎くて仕方の無かった妖怪になったんです。で、これ…」
そういうとそっと耳に着いているイヤカフに触れた。
「これ、僕の妖力制御装置なんです。つまりは悟空の金環と同じですね。」
「そうなんだ……」
「三蔵達に出会って、諭されて…三蔵が見張ると言うのを条件に執行猶予的な感じですよ。」
「……八戒……ごめんなさい…」
そういう雅の目からは一筋の涙が溢れていた。
「雅?泣かないでください。泣かせたくて話した訳じゃないんですから…」
「そうだけど…でも…何も知らないのに…」
「いいじゃないですか。知らないから知りたい、そう思ってくれるのは僕の事を大切に思ってくれてるから、でしょう?」
「でも…辛い過去…思い出させちゃって」
「やだなあ、思い出してませんよ」
「え?」
「常に覚えてます。思い出す余裕も無いくらい。だからわざわざ思い出した訳じゃないですから。」
「八戒…」
ふと顔をあげた雅はその優しい八戒の笑みに少しだけ救われていた。
「ごめん…ありがとう……教えてくれて…」
「いいんですよ。雅だから話したんです」
「八戒…」
「そんなことよりも。昨日は大変じゃなかったですか?」
「私は……別に…」
「そうでしたか。本当に副作用は…無いですか?」
「…?うん、今のところは…何も変わりないよ?」
そう話していた。その時、思い出したかの様に八戒は買い忘れがあることに気付いた。
「あ、だったら私見てくるよ!まだ買うものあるだろうし!」
「なんか、僕の方こそすみません」
「いいよ!じゃぁ、行った先のお店で待ってて?」
「解りました。」
そういって雅は買いに戻る。少し離れてしまってはいたが、店も覚えていたし、問題はないはずだった。