第19章 踊り子雅、誕生
「それでさ、雅が明日の見に来てっていってた!」
「いきますよね?三蔵」
「好きにしろ」
「好きに、じゃなくて三蔵もいくんでしょ?」
「俺はいい」
「いいって…」
「雅、三蔵にも見てほしそうだったよ?」
「どうでもいい」
「三蔵?」
たばこの火を押し消し、ベッドにごろりと横になってしまった三蔵を見てため息を吐く三人。そのまま三蔵は夕食も摂る事も無く、眠りについてしまった。
翌日…雅はやはり帰ってこなかった。朝食を済ませ、イベントが始まる十時まで広場辺りを見て回っていた。
「本当に三蔵いかねぇの?」
「行かねぇって言ってるだろ」
「後悔するぞ!」
「フン…」
そう捨て吐き、本番前の雅のもとへと向かっていった三人。
「あ!!いた!雅!」
「あ、悟空!悟浄、八戒も!ありがとう!」
「緊張してね?」
「少し…ね?」
小さく笑いながらも視線は三蔵を探していた。
「あの生臭坊主なら行かねぇっていって聞かねぇんだ…」
「そっか……三蔵らしいって言えばらしいね」
「雅、ごめんな?三蔵つれてくるっていったのに…」
「仕方ないよ、あの三蔵だもん」
そうこう話していると五分前になり、三人は客席に向かっていった。
「もぅ!三蔵なんで見ねぇのかな…」
「照れ臭いとか?」
「三蔵が踊る訳じゃねぇのに?」
「まぁまぁ……ッ?……クス……素直じゃないんだから…」
「なんかいった?八戒」
「いえ?何も」
そう、客席の最後列の場所に有る大きな木に凭れ、うつむく三蔵の姿を見つけていた八戒だった。姫乃が舞台に立ち、挨拶をする。そして城太郎は椅子に座り、ポロン…と現をならし出す。舞台の袖からゆったりとした足取りで出てきた雅は中央で一礼をする。視界には三蔵以外の三人がすぐに目にはいってきた。しかし、愛おしい相手の姿だけが見えない。少し寂しそうな顔をしてしまいながらも躍り切る。思いの外拍手がなりやまずに城太郎は目配せをしてギターをならし出した。次の瞬間だった。雅は木元に居る三蔵の姿を見つけたのだ。