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凜恋心【最遊記】

第19章 踊り子雅、誕生


その姫乃の一言で三蔵はピクリと手が止まる。

「今…何て言った?」
「ん?キスの相性?」
「……チッ」

一気に不機嫌になった三蔵そのときだ。戸をノックする音がした。

『三蔵、居る?』

その声は聞きなれた声そのものだった。しかし、三蔵の口をついてでた言葉は『入るな』だった。

「いいの?あんな言い方しちゃって」
「貴様には関係ないことだろうが」
「……ふぅん」

にっと笑った姫乃は手を振って扉の方に向かっていった。

「ならさ、明後日!見に来なよ!」

そう言い残して、三蔵の返事もろくに聞くことなく部屋を出ていった。

次の日、朝早くに雅は宿を出ていった。三蔵に会うことも出来ないまま、少し穴の空いた気持ちも埋められることもないまま…朝食に、と出た先で三蔵はあまり食が進んでいないことに気づいた八戒は声をかけた。

「どうしました?三蔵」
「何でもねぇよ」
「なんでもねぇって割には眉間のシワ、めっちゃふっかいよ?三蔵」
「うるせぇ、猿」
「本当の事言って猿って……」
「超機嫌悪いじゃん…」
「雅なら朝早くに練習に向かいましたよ?」
「誰も聞いてねぇよ」
「そうですか?三蔵がすごく聞きたそうだったので…」
「俺はなんにも言ってねぇだろうが…」

ガタンと席を立ち、カードを出すと八戒に預け、先に宿に戻っていった。そんな三蔵の背中を見て三人は顔をまたも見合わせる。

「雅と……喧嘩って訳でも無さそうだし…」
「何かあったとは思うんですが…」
「だったらさ!雅の様子テントに見に行ってみない?」
「お、たまには猿もいいこと言うじゃねぇの」
「そうですね、悟空達で見てきてくれませんか?」
「八戒は?」
「少しでも気を紛らせてやらないと……」

くすりと笑い、もう見えない三蔵の背中を見つめた。それぞれ二手に別れると、それぞれに任された場所へと向かっていく。

結局八戒は宿に戻るまで三蔵に追い付くことはできなかった。部屋に戻ると軽いノックと同時に八戒は遠慮なく入っていく。
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