第19章 踊り子雅、誕生
「ゆっくり食べないと…」
「てか…三蔵……食事の前にクリームぜんざいって…」
「何か文句あるのか」
「無いけど……口の中甘くならない?」
「フン…」
無愛想にもパクつく三蔵をにこにこしながら見つめる雅。しかし、早々に食べ終えると食事もしっかりと食べている。
「本当に三蔵って……独特だよね…」
「そうですよね」
にこっと笑いながらも八戒が相づちをうっていた時だ。
「あの!」
後ろから不意に声をかけられた。一行の視線は声をかけてきた男性に集まっているものの、そんなことはお構い無しにその男性は話を続ける。
「すみません!僕は城太郎と言うんですけど。少しお時間いただいても?」
「……」
「あの…」
「三蔵?またナンパされてる…」
「言っておくが俺は興味ない」
「…え?あの……僕が話してるのではあなたでは無く…」
そう言うと雅に視線を向けた城太郎。
「……え?私?」
「はい!あの…」
「あらぁ、なんと言う…」
「躍りって…できますか?」
「……え?」
一行の声はきれいにハモるように被っていた。そう、ナンパ、ではなく、踊り子の誘いだった。
「え……でも…」
「もちろん旅の最中なら今回限りでも全然いいんです。ただ、踊り子が不調でして…」
「そんなの関係無いだろうが…」
「そう言わず!……明後日のイベントに今からでは間に合わないんです……どうか人助けと思って…」
「…どうします?」
「三蔵…私やってみてもいいかな…」
「引き受けるのはいいが、第一雅、踊れるのか…?」
その一言で雅ははたっと気付いた。
「城太郎さん…でしたっけ…すみません、私踊ったこと無くて…」
「でしたら一度テントに来てください!」
「俺も見てみたい!」
「どうします?」
「明後日…だな」
「はい!」
「……好きにしろ」
その返事を貰って雅は一旦誘われるままにテントに向かっていった。テントに着くと、バサっと入り口を開ける。
「帰ったよ?」
「あ!ジョー!」
「姫、居たよ」
そう言うと城太郎は雅の背中を押してすっと中へと促した。
「えと…はじめまして…」
「あなた…かわいい!!!」
一気にが張りと巻き付いてくる姫と呼ばれた女性。しかし雅の中では不意に何か違和感があった。