第17章 剥き出しの感情
そういって八戒に頼まれて隣の部屋に持っていった悟空。
同時期、隣の部屋では三蔵に向き合っている雅の姿があった。
「三蔵…」
「うるせぇ、何にも言うな」
「…ごめん…」
「……ッチ…謝ってんじゃねぇよ…」
「痛かったよね…」
「これくらいなんともねぇ」
「そうじゃない…」
そっと手を包み込むようにして、じっとその手を見つめる雅。
「手…悟浄殴る時の手…痛かったよね…」
「……」
「もうやめて…そんな殴り合いするのに三蔵の手…使わないで…」
「必要ならするだろうが…」
「しないでいいよ……今回みたいなことは絶対に必要ない…」
「…俺の中では優先事項に当たるが?」
「当たらない」
「当たるっつってんだろうが…」
「あたら…無いよ…」
「それを決めるのは俺……ッ」
そっとキスで唇を塞ぐ雅。ゆっくりと離れると首に巻き付いた。
「お願いだから…そんな傷だらけにならないで…」
「……悟浄の事守ってたと思ったが…俺の見当違いだったって訳か…」
「今さら気付くなんて、三蔵にしては鈍いね…」
「お前が解りにくいだけだろうが…」
「三蔵がバカなんだよ…」
「雅に言われたくねぇよ…」
そんな恋人には似つかわしくない会話をしていた。そうっと扉を開けて様子を見ていた悟空は八戒に渡された薬を持ち戻ることになっていた。
「あれ?悟空…それ、三蔵の所にって、お願いしたやつですよね?」
「…何か…入れない…」
「全く…三蔵が怒鳴ってます?」
「違う……あれ見たら…誰だって雅の事好きになっちゃうよ」
「え?」
「って、俺は三蔵も好きなんだけど!その、恋とか愛とかっての…俺はわかんねぇからさ。でも…すげぇいい顔して…俺あんな三蔵の顔も見た事ねぇし…」
「……」
「ごめん悟浄、あれは…悟浄の負け…だと思う」
「んな純粋に泣きそうな顔して謝んなって…もう解ってっから。」
「…にしても困りましたね。」
「…貸せ」
「悟浄?」
「ちょっくらその珍しい三蔵の顔を拝みに行ってくるから。」