第17章 剥き出しの感情
「打ちたいなら打てばいいよ」
「何なんだ…」
「こんな殴り合いがいつまでも続く位なら打って終わるなら終わればいい。」
「雅…それは…!」
「ごめん八戒、黙ってて」
「ほぅ……」
三蔵の人指し指がゆっくりとトリガーに掛かった。
「三蔵がただ単にわからず屋なだけじゃん……」
「んぁ?」
「何があっても好きなのは三蔵だけだって言ってるのに…何もなかったって…言ったじゃん…」
「何も無かった訳ねぇだろうが!」
「そりゃ…悟浄には押し倒されたけど…でもそれ以上は何もない」
「十分な理由だ」
「三蔵!」
「…退け」
銃を後ろに放り投げ、ベッドに着地すると同時だろうか…雅をその場から横に払い、三蔵は思いっきり悟浄の頬めがけて拳をいれた。
「……二度と手ぇ出すんじゃねぇよ。次はマジで殺す…」
そう言うと部屋を後にした。騒がしいと思い、宿主始め、数人が部屋の前に集まっていた。
「すみません、騒がしくて…痴話喧嘩でして…さっき片付きましたので…」
「それならいいが…」
「雅は三蔵のところに行ってください?」
「…ごめんね…八戒」
そういって三蔵の後をおった雅。残された部屋では悟浄を抱え、ベッドの縁に座らせた。
「全く……あなた達は…」
「でもさ…悟浄…相手は三蔵だろ?無謀だって…」
「…うるせぇ猿」
「悟空の言う通りです。それに…」
「それ以上言うな…」
「え?」
「完全にフラれたの、聞いてただろ…」
俯きながらそっと目を閉じる悟浄。耳の奥に残っている雅の言葉がずっと木霊していた。
『何があっても好きなのは三蔵だけだって言ってるのに…』
「俺じゃ到底雅の心には入り込めねぇんだよ…」
「フ…三蔵に思いっきり殴られて気付くなんて…相当好きだったんですねぇ…」
「うるせぇ…ほっとけ…」
「そうは行きません。悟空…薬、これだけあれば三蔵の方も足りるでしょう、持っていってください?」
「…げ、俺が?」
「長居しなければ問題ありません」
「わ…解った…」