第8章 年下幼馴染はご乱心✿保科宗四郎✿
「宗四郎くんと結婚させてくれへんのやったら、なんもかんも捨てたる。宗四郎くん以外に大事なもんなんてあらへんもん!」
「……美影ちゃん、僕も好きや。ガキん頃からずっと、君が好きやった。自分のもんにならへんのやったら、どうでもええ思てあんな態度取っとったけど、やっぱ嫌や…君が欲しい。」
初めて彼の気持ちをちゃんと聞けて、涙が溢れ出してくる。
もう誰にも邪魔させへん、何がなんでもこの人と一緒なる。
「宗四郎くん堪忍なぁ?家も大事言うとったけど…全部捨てて欲しい。重い女でほんまにごめん。」
微笑んだ彼は私の手を握ったかと思うと、指先に優しい口付けを落とした。
「何もない僕でもええの?家も肩書きも地位も何もない僕でええの?」
「宗四郎くんならなんでもええ。宗四郎くん自身とここがあれば、他はなんもいらん。」
胸にそっと手をあて見つめる。
「僕も君がいればなんもいらん。君の為なら全部捨てたる。」
一度きつく抱き締めると手を引いて実家を出て行こうとする彼を、父2人が止めた。
「わかった。認めたる、2人の覚悟。御先祖様のことは本当かどうかはわからん。そんなん関係なしに、お前らの結婚認めたる。」
宗四郎くんの父が彼の腕を掴んで真っ直ぐ見てくる。
「そこまで想い合うとるんなら、もうなんも言えん。好きにしぃや。せやけど…おとんの傍おって〜、美影がおらんくなったら、おとん寂しいわぁ。」
私の腕を掴んだ父が泣きついてきた。
私ら、認めてもらえたん…?
宗四郎くんと見つめ合って、一緒に笑い出す。
全部捨てる覚悟で来たが、何も手放さなくていいようだ。
「俺もええよ。元々美影ちゃんと結婚する気なんてなかったし、2人が想い合っとるんも知っとったからな。」
宗一郎くんはいつから知っとったんや…。
だから何も口出しをしなかったのだろう。
名前を呼ばれたので宗四郎くんの方に目線を戻すと、視界いっぱいに宗四郎くんの顔が広がり、大好きな匂いが鼻を掠める。
少し低めに愛しとると呟いた声が口付けに溶けた。
散々恥ずかしい言葉を言っていたのに、みんなの前でするキスは恥ずかしかった。
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