第7章 抑えられない✿保科宗四郎✿
「おっと…大丈夫か?三浦。」
「あ、ありがとうございます。」
水平棒で懸垂をしながらボーッとしてまって手が滑り、落ちそうになったところを斑鳩小隊長がお腹に手を回して受け止めてくれる。
これが副隊長だったらドキドキして顔が真っ赤になって、離さないでと心の中で叫ぶのだろう。
やっぱり忘れることなんて出来ませんよ…。
「斑鳩、セクハラやぞ〜?」
突然声をかけてきた副隊長に斑鳩小隊長は慌てて手を離し、違います!と普通よりも大きい声を上げた。
「ひゃっ!?」
「なら、これがセクハラやってか?」
いきなり背中をつぅ…っとなぞられて変な声を出してしまう。
「今回は許したる。せやけど、次三浦に触れたら…わかっとるな?」
え?
斑鳩小隊長は助けてくれただけ……それよりなんでそんなことを?
姿が見えなくなるまで斑鳩小隊長を見送ると、副隊長はじっと私を見つめてきた。
「やっぱ忘れて欲しない…女の子やなくて君が好きなんや、美影。」
名前…不意打ちでやめて欲しい、心臓が痛い。
なかったことにしたくせに…。
両手を握ってグッと顔を近付けてきた彼に、至近距離で見つめられる。
「抑えよ思たけど、やっぱ無理やった。これ以上近付いたらあかんって思ったんに…もう抑えられへん。好き過ぎておかしなる。抑えられるわけなんてなかったんや。」
嘘…私はやっぱり特別だった?これからはもっと特別になれる?
彼は見つめたまま動かない、その赤紫の瞳に吸い込まれそう。
「僕の気持ちに応えてくれるんやったら、逃げんで?」
目が閉じられて唇は重なった。
少し震えた唇が愛しい。
震える程緊張してるのに好きな気持ちは抑えられないのは私も同じ。お互いの想いが溶け合う。
「私もあなたが好きです。」
___________....end.