第37章 禪院直哉の溺愛奴隷✿禪院直哉✿裏
後ろからきつく抱き締める腕は、力を入れているとわかるほど血管を浮き出させているのにとても優しくて、ただ宝物を腕の中に閉じ込めているようだった。震えた息が肩にかかり、先程沈めたばかりの熱が私の腰を押し返す。
「……美影ちゃん…はぁ……あ"あ"っ!!クソッ…!」
いきなりの怒号に肩を震わせる。何か怒らせることをしただろうか……機嫌を損ねないようにと気を使って接していたはずだが、先程の醜態を思い出し、余裕なく直哉様を怒らせてしまったのかもしれない。
「あ……お前が悪いんやない。なぁ………俺、どないしたらええんやろ…」
あんなにも高圧的で傲慢な彼の、弱々しくか細い声。熱を発散したらいいんだろうか……少し腰を下げ、軽く押し当てた。だが、それは違うらしく、頬を撫でた指が顎を掴み、振り向かすように引き寄せられる。
至近距離でジッと見つめられ、よくわからない熱が身体の奥で燻り始めた。こんな彼を、昔、一度見たことがある。それは――まだ私が中学生の頃だったろうか__
足癖が悪い直哉様は、まだ幼い私の妹、真希にその足を振り落としていた。私はやめて欲しくて、直哉様の腰に抱きつく。
「…わ、私を蹴っていいから…真希は、やめてください……」
直哉様は息を呑み、身体を強ばらせた。腰にきつく巻き付けた私の腕を掴み、ゆっくりと離れさせる。真希にはあんなに痛いことをしていたのに、その手は驚くほど優しい。
「……ちゃうやんか…お前は、ちゃうやんか。俺は………クソッ!!なんやねん!俺はお前にそないなこと出来へん!どっか行けや!!」
そう怒鳴って大きな足音を立てながら、私たちから離れていく直哉様。咀嚼出来ない違和感を抱き始めたあの日。今も、それと同じような空気が流れていた。