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魅惑の恋【短編集】

第35章 冷たさの中の熱✿保科宗四郎✿裏


副隊長の唇が頬に触れた。本当は唇に触れるつもりだったんだろう。私が顔を背けたから、副隊長は少し迷って、そのまま頬に口付けた。

「副隊長……それだけ…その言葉だけで足りると思ってるんですか。捨てられたくないなら、もっと…何か言ってください」

呼び方も敬語も変えなかった。今はまだ変えられない。ジッと見つめられている気がして、副隊長の方を向く。副隊長の赤紫の瞳が真っ直ぐ私を捉えていた。

幾ら私を守る為だったとは言え、私はたくさん傷付いたんだ。このくらい許されるでしょ?

「美影が欲しい。全部欲しい。乱れる君を思い出して、自分で慰めてきた。君がしろ言うなら、目の前でする。寸止めさせてもええ。君に許しを乞いながら、イかせて欲しいて強請る」

指がピクッと動いた。なんでそっちのことになるの。確かに副隊長がそんなことを言ったのには驚いたけど…違うの。私が欲しい言葉はもっと別の……。

「……ちゃうか。君が欲しいんは、こっちやろ。……ほんまに愛しとる。保科なって」

心臓がドクンと跳ねた。本気で言っているのだろうか……ジッとその瞳の奥を見つめる。迷いなど、ないように見えた。思わず頷くと、子供のように無邪気な笑顔を見せて、指を絡めて握った。

この人、本当に私のこと好きなんだ。私はこの人の戦いの強さではなく、必死に努力を重ねる姿に惹かれた。あなたは、どうして私を好きになってくれたの?

「私を好きになるところなんて、ありましたか…?」

「いっぱいあるで。まずは笑顔がめっちゃ可愛いとこやな。努力して強なって、それでも努力を続けて…どんなにきついことでも、言われたことは何時間かけてでも熟した。嘘もつけへんしな」

そんな風に語る彼の顔はとても優しくて、本心を言っているのだとわかる。頬に触れる手は、キスをしたいのを我慢しているのだと、気付いていた。待てを下された子犬みたいに、震えるその手。

クスクス笑いながら目を閉じた。
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