第35章 冷たさの中の熱✿保科宗四郎✿裏
ソファに座るように言ったのだが、なかなか座ってくれない。私が座ったのだから、早く座って欲しい。でも副隊長は私の目の前で床に膝をついた。初めて彼をこんな風に見下ろす。今までは彼の目線が下でも、いつも私が見下される側だった。
私の膝に額を乗せる。こんなこと、されたことない。
「ごめん。……守っとるつもりやった。でも、全然守れてへん上に、僕が一番傷付けとった。殴ってもええし、僕がしとったこと、僕にしてもええ。やから…僕を捨てへんで」
何を言ってるのか、さっぱりわからなかった。顔を上げて見つめてくるその瞳はよく見えないけど、嘘を言っているようには見えない。
守ってるってどういうことだろう?討伐でのこと?それに捨てるって…先に私を見るのをやめたのはあなた…。
「君が入隊する前、可愛がっとった新人がいて…別にそういうつもりはなかった。ただ訓練つけたり、一緒に飯食ったりしとっただけ」
簡単に言えば、贔屓してたってこと?その人は虐めを受けて辞めたそうだ。それで私には冷たく接し、そういうことにならないようにしていた。二人きりの時も冷たかったのは、私が副隊長とのことを言いふらさない為。
「君に告られた時、頷くことしか考えてへんかった。僕も、ずっと好きやったから…君に触れられる。触れて欲しかったけど、君が望んでたから触らせへんかった」
辱めることだけを考えていた。そうしたら私は誰にも言えなくなるから。私と副隊長がそんなことをしていたなんて、誰も知らないまま、ずっと副隊長の鎖に繋がっていられた。
パーカーを押さえたまま副隊長を見つめていると、ゆっくり近付いてくる。薄く覗く赤紫は、静かに揺れていた。
「美影、好きや__」