第31章 Lost Love✿保科宗四郎✿
胸が張り裂けそうな、あの人の変わりに私が…そんな苦しい程の恋をした。ううん、苦しいなんてものじゃない。このまま何もかも、私の全てが失くなってしまえばいいのにとさえ思えた。
あなたがいない世界で息をすることが出来なかった。たった1年前のこと__。
本当に本当に大好きだった。このまま結婚してずっと一緒にいるのだと思っていた。それでも現実は残酷で、私の全てだったあの人を奪ったのは――誰よりも尊敬していた、保科副隊長だった。
わかっている、保科副隊長のせいではないと…だけど、あの時、副隊長が判断を間違わなければ…違う、間違ったんじゃない。防衛隊員として、正しい判断だった。
「あ、三浦…これ、戻しておいてくれへんか?」
「了。……あの、副隊長……すみません、なんでもないです」
保科副隊長から渡された書類を手に資料室へ向かう。私は今、何を言おうとした?責める言葉をナイフのように突き刺そうとしていた。頭ではわかっているのに、苦しい。あの時、散々この人を苦しめたのに。
背を向けると引き止められたので、振り向いてジッとその細い目を見つめた。
「すまんかった。悠稀のこと…」
「すみません、私があの時、あんなに責めたからですよね。わかってます、副隊長は間違ってません。すみませんでした」
何かを言いかけた副隊長に気付かないフリをして、今度こそ、資料室へと足を進めた。