第30章 嫌い…だと思っていた✿保科宗四郎✿裏
ちょうどご飯が出来上がる頃、宗四郎さんが帰ってきて、先にお風呂に入るようなので急いで沸かした。
浴室から戻ってくると、おいでと手招きをされる。トコトコと小走りをしながら駆け寄り、ソファに座っている宗四郎さんの目の前まで来る。
「ちゅーやろ?」
腕を引かれて前屈みになると唇が触れて、そのまま舌で舐められる。その感触に震えて軽く唇を開くと、侵入してきた舌が私のそれを絡め取った。激しく絡まる舌に、切ない吐息が漏れていく。
ゆっくりと離れた唇が震える。ボーッと宗四郎さんを見つめて、力が入らなくなった身体は宗四郎さんの胸へと倒れていった。
「おっと…大丈夫か?気持ち良かったんやねぇ……好きやよ。指輪、買うへんとな」
「え?指輪?好き?」
「ん、好きや。健気で可愛ええなぁ思て…痛いのに、我慢してくれたんやろ?泣いとるん隠して」
そんなところを好きになってくれたのか。私も好き…と何度も零しながら、涙が溢れていく。冷たくされて耐えていたのも、無駄じゃなかったんだと、嬉しくなった。
「あ、泣いてもうた」
「泣いて…ないっ!早くお風呂入ってください!」
宗四郎さんの笑い声がいつまでも部屋に響いていた。
_____________....end.