第21章 忘れられない✿保科宗四郎✿裏
もう耐えられないと隣にいた弦くんの手を握った。
家族からの虐待、学校での虐め、私はもう身も心も限界だった。いつも助けてくれた宗ちゃん。いつも泣いている私を慰めてくれた宗くん。私は弦くんと遠い場所に行きます。
「あいつらのことは忘れろ」
もう忘れることしかないのだと、弦くんの言葉に頷いた。吐く息が白くなる夜、弦くんに手を引かれながら星が煌めく空の下を走り抜けた。
名前を呼ばれて立ち止まる。だけど、振り向くことは出来なかった。振り返ってしまえば、またあの地獄の日々に戻ることになる。
「美影ちゃん!!行かんで!僕が守る、美影ちゃんを一生守る!だから……それか連れてってや!僕も連れてって!絶対守る!!ずっと一緒にいてや…!」
ごめん、宗ちゃん…ありがとう。私の初恋の人…。
振り返ることも言葉を返すことも出来ず黙っていると弦くんに手を引かれ、待ってや!守るから!と何度も叫ぶ宗ちゃんの声を振り切った。