第11章 あなたの心、私の全て✿保科宗四郎✿裏
「三浦、ちょっとええか。この後、時間くれ。」
なんで話しかけてくるんですか…途中で逃げたことを怒ってるんですか。
断ることも出来ず、了と答えて後をついていく。
訓練も終わったから早く帰りたい…。
「ほっんまにごめん!!あそこまでするつもりやなかったんや…完全に理性失くしとった。怪我してへん?」
執務室にくると誰もいなかったので、副隊長はいきなり土下座をし始めた。
もし誰かにこんなところを見られたら非常にまずい。
慌ててやめるよう言うが顔を上げる気はないようだ。
「……責任は、責任は取ってくれるんですか…。」
私、最低だ。あれを利用しようとしている。
それでも…それだけのことをしてもこの人が欲しいと思ってしまった。
顔を上げた副隊長は首を傾げて少し考えている。
「怪我したんか?治療費も慰謝料も…。」
「違います、そんなのはいりません。」
あなたの心が欲しい…。
わかってるのに…こんなことしてもこの人の本当の心なんてもらえるはずないなんて。
「好きです。副隊長が好きです…。」
「あないなことしたのに…?」
膝をついて目線を合わせ、痕がついた首筋を見せた。
「私の身体が欲しいのなら、あなたの心をください。」
普段見ることが叶わない瞳が真っ直ぐ私を見ていた。
「……僕の心なんて、とっくに君のもんやけど…。」
何を言って…副隊長は別に私のことなんて好きじゃないはず…。
君の気持ち疑ってごめんと言われて、今度は私が首を傾げた。
「別に僕のこと好きなんやなくて、ただしたいだけやと思て…僕もこの機会逃したら一生出来んと思て……最低やな、ごめん。」
聞かせて欲しい、あの言葉を…そしたら私の全部あげますから…。
膝の上に置いた手を握られ、じっと見つめてくる。
触れることを許したのはあなただから…今だって手を握られて、心臓が痛いの。
「美影、君が好きや。キス、してもええ?」
名前…この脈打つ心臓も何もかもあなたにあげる。
目を瞑れば、ふわっと副隊長の優しい香りに包まれて、優しい口付けを交わした。