第19章 小さな手
翌日。誰もいない僕の部屋には、いつも通りの朝を迎える。
今日はなんの用事があったっけ、とスケジュールを確認しながら出掛ける準備をして僕は部屋を出た。
……なんか扉が少し重い。
力を入れて扉を開けると、そこにはゴロゴロと何かが転がってきた。
リンゴ、スイートベリー、カカオ豆……。
どうやら僕の部屋の前に誰かがカカオ豆入りのフルーツバスケットを置いて行ったらしい。
また誰かのイタズラなのかな、と思いながら拾い集めていると、朝活中だったきおきおさんと遭遇。
「あれ、それってオウムちゃんからの恩返しですか?」
きおきおさんの言葉に、僕は急速に、オウムちゃんのあの小さな手を思い出して泣きたくなった。
あの時のオウムが本当に来ていたのかもしれない。
僕は、フルーツバスケットを胸にしっかりと抱えた。
おしまい