第5章 ST☆RISH ツアー中の過ごし方
「じゃあレディ…いってくるね…」
「1人で家にいる時は
ちゃんと戸締り…してくださいね?」
2人に
前と後ろから抱きしめられて
まるで世界に2人と私だけのよう。
『うん…2人も、
ハードスケジュールだけど、頑張ってね。』
「はい。電話…絶対かけますから。
…チュ…」
『うん…ありがと…//』
「レディ…あの2人にも
十分気をつけてね?
…チュ…」
『…うん。…//』
名残惜しくも
6日分の荷物を持った2人を見送る。
ガチャ…
バタン…
と、扉の閉まる音がして
部屋がシン…とする。
『…………
よし、私も支度しなきゃ…』
**
正門が開いて
私の運転手兼秘書がガレージの前に
車を止めるのが分かる。
車はカモフラージュのために
クリーニング店の営業車に似せている。
縁の無いメガネに黒いスーツを着こなした男が
ダイニングの扉を開ける。
「□□様…お迎えに上がりました。」
『菱…ありがとう^^』
「…同居人の皆さんは?」
キョロキョロと部屋を見渡す彼に
『菱が来る時に居たこと無いでしょ?
それに、会わせる気ないもん。』
というと、
残念…とでもいうように
眉を下げる。
「そうですか…
それよりも、
また依頼件数が増えていて
かなり逼迫した状況です。
先方にもスケジュールの見直しを
お願いしてはいるのですが…」
タブレットに
案件をまとめた資料を出してくれる
『…仕方ないよ。
舞台やコンサートって日程変えられないし』
「…ですね。
A社、B社どちらかの納期が
遅れてるのかもしれませんので、
そのあたりはヒアリングを続けていきます。」
『うん…お願い。』
タブレットをカバンに仕舞いながら
ダイニングの扉を先に開け
さあ行きましょうとでも言いたげな彼。
「…社長…」
『こら!
社長って呼ばないでってば!٩(๑`^´๑)۶』
「し、失礼しました。
□□様、続きは社で…」
『うん。早く行こう』
戸締りをしっかりして
偽のクリーニング屋の車に乗り込む。