第13章 Mighty Aura
~♪
キュッ…キュッ(ステップの音)
レイジング事務所にて
HE★VENSの練習の様子をみて
焦りを覚えるトキヤ。
さらに、鳳瑛二という圧倒的才能に
初めて個人として畏れを感じてグッと拳を握る。
「……」
レッスンルームのなかでは、
休憩中の鳳瑛一が
トキヤに気づき、
「なんで、あいつがここに…」
と呟く。
すると、向こうもこちらに気づいたのか
ペコッと頭を下げる。
瑛一が水分補給を一通り終えて、
声をかけに行こうと
1歩を踏み出そうとしたとき、
「あっ!一ノ瀬さん!」
と、彼の弟、鳳 瑛二が声を上げる。
「ん!?…お前が呼んだのか?」
と聞くと、
うんと頷いて、
「一緒に練習しようって俺が誘ったんだ。
マズかった?」
と不安げに聞いてくるので
「いや、好きにしろ…」とだけ伝える。
そして、
トキヤの方に向かう弟の背中を見送った。
**
(一ノ瀬トキヤ…
親父が認めた才能…)
瑛一がそんなことを考えながら
廊下を歩いていると
見覚えのある顔が
衣装等を保管してある倉庫から出てきた。
『じゃあ、また何かあったら
弊社の方に連絡ください。』
と、衣装を管理しているスタッフに
ペコッとお辞儀をして
くるっと瑛一の方を向いて歩き出すのは
副業モードの〇〇だ。
すると瑛一に気づき
はっという顔をして
目を逸らし、ペコッとお辞儀をして
通り過ぎようとする。
「……また、逃げるのか?」
瑛一が足を止めてそう声をかけると
『はい?』
と、聞き捨てならないと言わんばかりに
足を止めて睨みつける〇〇
「…なんだ、
以前はいいこぶりっこばかりで退屈だったが、
少しは…変わったのだな…」
鋭く瑛一を睨みつける〇〇の顎を
くいっとあげて
もっと顔をよく見せろと言わんばかりの瑛一。
『なんで瑛一のためみたいな言い方なのよ。
私たちもうとっくに終わったの。
…絡んでこないで。』
冷たく言い放つ〇〇は
その手をパシっと振りほどく。