第12章 向き合う
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「わぁお。
随分いい家に住んでるんだね。」
と、入室して早々に
部屋を物色し始める嶺二
「こんな広い部屋に
1人で住んでるの?」
って、探りを入れてくるから
『もう気づいてるんでしょ?
余計な詮索しないで。』
と言うと
ソファにボスっと座って
「えへへ~。
この家でランランとミューちゃんが
一緒に住んでたって凄いよね…
今の家では2人とも喧嘩ばっかりだよ。」
と、いつになく神妙な面持ちで話し始める嶺二
『……2人、どうしてる?』
「何も連絡ない?」
『うん…
何も連絡ないってことは、
上手くいってるんだと思ってた…』
と答えながら
コーヒーをカップに淹れる。
すると、
「実は………もうダメかもって…思っちゃって。」
と悲しげな表情で呟く嶺二。
『ダメって?』
私は淹れたコーヒーを
テーブルに起きながら
嶺二の斜め向かいに腰掛ける。
「僕達バラバラなんだ…
全く同じ方向を向いてない」
と、泣きそうな声。
『嶺二………』
私は嶺二の方に少しだけ近づいて
ずっと話を聞いてあげた。
彼らが結成したのは本人達の意思では無いことや
ランランとミューちゃんの折り合いが悪いこと
藍ちゃんがどこか他人事なこと。
そして嶺二のこれまでの苦労…
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「だから…もう無理なんじゃないかって思う…」
そう涙ぐむ彼に
『そんなことないよ。
今は皆、嶺二に甘えてるだけ。
嶺二なら何とかしてくれるって
何でも受け止めてくれるって
思ってるんじゃないかな…』
と、真っ直ぐ目を見て言ってあげる。
「でも…それじゃ、
ST☆RISHやHE★VENSには勝てないよ。」
と、嶺二の意見はもっともだ。
それならと
『じゃあ…私の話も少し聞いてくれる?』
って言うと…
「うん。ごめん、僕の話ばかりしちゃって…」
『ううん。いいの…聞いて。
私が副業を始めるきっかけになった事件…
覚えてる?』
「あ、あぁ。あのストーカーの…
徹底的に緘口令が敷かれて
メディアでは取り上げられなかったけど、
業界では噂になってたよ。」